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名古屋見聞録:33

名古屋の睦月

つい昨日までの慌ただしさがウソのような元旦。
わずか一夜を境として何もかもが新しさに溢れているように見えるから不思議だ。
元旦の朝は一服の大服茶で清々しく始めたいと思うのは私だけのことではないはずだ。
大服茶とはたっぷり注いだお茶に小梅・結び昆布・山椒の実を入れたもので、
雑煮より先に一家揃って飲み、賀客にも勧めるというのが習いというお茶。



そして、元旦に雑煮として餅を食べる風習はどうも中国から伝来したという。
雑煮に入れる餅、関東では長方形の切餅で関西ではなぜか丸餅だが、
本来の意味から言うと雑煮に入れる餅は丸餅でなくてはならないという。
それというのも雑煮とは生命力の更新を図るために餅を食べるもので、
その形が大切であり、餅だったら何でもいいというものではない。
丸餅は切餅と違って心臓を形どったものではないかとも言われている。
また鏡餅の名は単に鏡のような丸い形から名付けたものではなく、
「鏡に写すようにそこに人々の影、すなわち魂の外に現われた姿を見たからで、
そこに人々は命の指標を見た…」うんぬんと歳事記の一節にある。

◆◆

最近では行事そのものが忘れ去られた感があるが、正月11日は鏡開。
それまで神前に供えてあった鏡餅をこの日に割って家族みんなで食べる。
昔は鏡開は鏡を命とする女の子の祝日であると同時に、
武家では男子のために具足餅として祝う日でもあったという。
その餅は刃物で切ることを忌み、必ず手または槌で割るのをシキタリとした。
切るといわず「開く」とめでたい言葉を用いたのがいかにも正月らしい。
鏡開は元来、正月20日におこなわれていた行事だったが、
徳川幕府の3代将軍である徳川家光の厄日が20日であったことから、
正月11日に繰り上げておこなうようになったという。
開いた鏡餅は蕪を入れた雑煮として食べるのが武家の習いでもあったと聞く。

◆◆◆

この日をもって一応正月気分にケリを着ける鏡開にするためにも、
親しき酒友をいつもの飲み屋にでも誘って、
互いの健康というか余生を祝して乾杯するのも一興かと。
正月そうそう、よからぬことが頭を駆け巡っている私である。
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[名古屋の睦月]
名古屋の1月ということで名古屋中央卸売市場をHPで調べたものの、
これといった記事もなく、仕方がなく三河湾の旬の魚を取り上げることにした。



別名春告魚という名前でもよく知られているメバル。
漢字で目張とも書くメバルはカサゴ目フサカサゴ科メバル属の魚。
三河湾では春を告げる魚メバルがいかなごの稚魚を食べて旬を迎えている。
視力がいいので網や釣り糸を見分けるメバルは獲りにくい魚だが、
味がいいため磯釣りの人気者でもある。
体にはカサゴ科の特徴である頭部には様々なトゲがあり、
中でも眼の下にある2本のトゲは強くて硬く、刺さらないように注意する必要がある。
また、メバルは胎内で卵をふ化させ、仔魚として海に産み落とす珍しい
性質を持っている。これまで三河湾で上がるメバルは魚体の色で色分けして、
黒灰色のクロメバル・灰褐色のキンメバル・灰赤色のアカメバルなどと呼んでいたが、
あくまで同じ種類のメバルが環境の変化に適応して色が異なっていると言われてきた。
しかし 近年の研究でそれぞれ異なる種類という説が有力になってきている。
1〜2月が旬のメバルはちょっと甘めに煮付けると身が反り返ってホロホロと
食べやすく、名古屋の近くで捕れる魚の中ではアイナメと並んで淡白で
しかも上品な味だが、名古屋市内の魚屋の店頭に並ぶことはほとんどない。
なぜなら市場でほとんどが飲食店等に買い上げられて、
スーパー等ではお目にかかれない幻の魚かも知れない。



この時期旬のしらすはマイワシやカタクチイワシなどイワシ類の稚魚のことで、
水揚げしたばかりのしらすを水で洗い茹であげ、
不要な水分をきったものが「釜揚げしらす」。
それを軽く乾燥させたものが「天日干ししらす」。
更に、よ〜く乾燥させたもが「天日干しちりめんじゃこ」と呼ばれている。
三河湾でのしらすの水揚げ量は全国でもトップクラス。
ダマされたと思ってこの時期一度と言わず何度でも食べてみたいもの、
それがしらすである。



お寿司の高級寿司ネタやフランス料理の食材として人気のあるタイラギは
干潟や浅瀬の埋め立てが進んだことから数が激減している貝でもある。
イガイ目ハボウキガイ科のタイラギ(平貝)は内湾の砂泥底に尖った方を下にして
泥底に刺さるようにして砂泥の中に生息している。
また、殻の先端近くから出ているツヤツヤした茶色の絹糸のような糸を使って、
砂粒や小石に貼りついて体を固定している。
殻は全体的に灰褐色だが、中心の貝柱があるあたりはピカピカと玉虫色をしている。
2年で約20cmにも成長する大きな貝なんだが
殻は割れやすくてきれいな海でしか育たないという繊細な貝でもある。
甘くてシコシコとした歯ごたえのある大きな貝柱だけでなく、
小さいなヒモ・肝もとてもおいしい。
by tomhana0904 | 2007-01-04 06:45


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